「退職後、しばらくの間どうやって生活すればいいんだろう…」と不安になっていませんか?
実は、看護師が退職したあとも、申請すれば受け取れるお金が複数あります。失業保険だけでなく、傷病手当金・退職金・再就職手当・教育訓練給付金など、知っているかどうかで手取り総額が大きく変わることも。
この記事では、看護師が退職後にもらえるお金を種類別にわかりやすく解説します。申請条件・金額・手続きの流れをまとめたので、退職前後にぜひ活用してください。
退職後にもらえるお金:全体マップ
退職後にもらえるお金は、大きく「誰でも対象になる給付」と「条件によって変わる給付」に分けられます。まず全体像を把握しておきましょう。
① 退職金
勤続年数で変動
職場による・要確認
② 傷病手当金
給与の約2/3
最長1年6ヶ月
③ 失業給付
給与の50〜80%
90〜360日分
④ 再就職手当
残日数の60〜70%
早期就職でお得
⑤ 教育訓練給付
受講費の20〜70%
資格取得に使える
⑥ 確定申告還付
数万〜数十万円
年の途中退職者向け
これらの給付金・手当は、自動的に振り込まれるものではありません。自分で申請して初めて受け取れます。退職後は手続きが多く忘れがちなので、この記事を参考に漏れなく申請しましょう。
① 退職金:退職時に受け取れる一時金
退職金は、勤務先の規定によって支給の有無や金額が異なります。病院・クリニック・施設によって制度がまったく異なるため、在職中に就業規則や退職金規定を確認しておくことが大切です。
大規模病院や公的医療機関は退職金制度が整っていることが多い一方、個人クリニックや小規模施設では退職金がない場合もあります。転職前に必ず確認しましょう。
看護師の退職金の目安(勤続年数別)
| 勤続年数 | 目安金額(一般的な病院) | 備考 |
|---|---|---|
| 3年 | 30〜60万円程度 | 最低限の支給ライン |
| 5年 | 60〜120万円程度 | 施設により大きく異なる |
| 10年 | 150〜300万円程度 | 公的病院は高め |
| 20年以上 | 300〜800万円以上 | 国公立病院は高額になることも |
退職金には「退職所得控除」という大きな税制優遇があります。勤続20年以下は1年あたり40万円、20年超は1年あたり70万円を控除できるため、多くの場合ほぼ非課税または低税率で受け取れます。退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出することを忘れずに。
② 傷病手当金:病気・ケガで働けない場合
傷病手当金は、業務外の病気やケガで働けなくなった看護師が受け取れる健康保険からの給付です。バーンアウト(燃え尽き症候群)や腰痛・精神疾患など、看護師に多い疾患にも適用されます。
標準報酬日額 × 2/3
例:月給30万円の場合 → 1日あたり約6,667円 / 月約20万円
- 業務外の病気・ケガで療養中であること
- 働けない状態にあること(医師が証明)
- 連続する3日間を含む4日以上仕事を休んでいること
- 休業した期間に給与の支払いがないこと
- 退職日までに継続して1年以上健康保険に加入していること
- 退職日の前日までに連続3日以上欠勤し、退職日も休業していること
- 退職後も同じ傷病で引き続き働けない状態であること
傷病手当金の受給中に「挨拶だけ」「荷物を取りに行くだけ」と退職日に出勤してしまうと、退職後の継続受給資格を失います。退職日は必ず休業した状態を維持しましょう。
支給期間:支給開始日から通算して最長1年6ヶ月(途中で働いた日は期間に含まれず延長されます)
傷病手当金は「働けない人向け」、失業給付は「働ける状態にある人向け」の制度です。回復して就職活動できる状態になったら、傷病手当金から失業給付に切り替えます。その際は失業給付の受給期間延長手続きを事前に行っておきましょう。
③ 失業給付(雇用保険の基本手当)
退職後の定番給付といえば失業給付(失業保険)です。次の就職先が決まるまでの間、生活を支援する制度で、看護師の場合は求人も多く早期再就職もしやすいため、転職先をしっかり吟味する余裕が生まれます。
賃金日額 × 50〜80%
離職前6ヶ月の給与合計 ÷ 180 = 賃金日額 / これに給付率(50〜80%)をかけた額が1日分
- 雇用保険に加入していたこと
- 自己都合退職:離職日以前の2年間に雇用保険加入期間が通算12ヶ月以上
- 会社都合退職:離職日以前の1年間に加入期間が通算6ヶ月以上
- ハローワークで求職申し込みをし、積極的に就職活動していること
- 就職できる状態にあること(病気・出産で働けない場合は対象外)
給付日数の目安
| 退職理由 | 加入期間 | 給付日数 |
|---|---|---|
| 自己都合 | 1年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 | |
| 20年以上 | 150日 | |
| 会社都合・特定理由 | 1年以上5年未満(45歳未満) | 90日 |
| 5年以上10年未満(45歳未満) | 180日 | |
| 20年以上(45歳以上60歳未満) | 330日 |
2025年4月以降、自己都合退職の給付制限期間が原則2ヶ月から7日間に短縮されました。待期期間(7日間)終了後すぐに給付が始まります。ただし、5年以内に2回以上自己都合退職した場合は3ヶ月の給付制限が残ります。
手続きの流れ
④ 再就職手当:早期就職でもらえる「お祝い金」
失業給付の受給期間が残っている状態で就職が決まった場合、残日数に応じたまとまったお金が一括で支給されます。「失業保険をもらい切ってから就職しよう」と考える方もいますが、実は早期就職の方がトータルで受け取る金額が多くなるケースがほとんどです。
- 失業給付の所定給付日数の3分の1以上を残して就職したこと
- 待期期間(7日間)が終了した後に就職したこと
- 1年を超えて働くことが見込まれる就職先であること
- 離職した会社への再就職でないこと
- 過去3年以内に再就職手当を受けていないこと
基本手当日額 × 残日数 × 給付率
残日数が2/3以上 → 給付率70% / 残日数が1/3以上2/3未満 → 給付率60%
給付日数90日・基本手当日額6,000円の看護師が、残60日(2/3以上)の時点で就職した場合:
6,000円 × 60日 × 70% = 252,000円が一括で支給されます。
申請先:管轄のハローワーク(就職日の翌日から1ヶ月以内に申請)
⑤ 教育訓練給付金:スキルアップしながらお金をもらう
退職後にスキルアップや資格取得を考えている看護師に使える制度です。厚生労働大臣が指定する講座を受講すると、受講費用の一部が返ってきます。認定看護師・ケアマネジャー・保健師など関連資格の講座も対象になることがあります。
| 種類 | 給付率 | 上限額 | 対象例 |
|---|---|---|---|
| 一般教育訓練 | 20% | 10万円 | 簿記、語学、PCスキルなど |
| 特定一般教育訓練 | 40% | 20万円 | 介護福祉士、社会福祉士など |
| 専門実践教育訓練 | 50〜70% | 年40〜56万円 | 認定看護師、保健師養成課程など |
- 雇用保険に一定期間加入していたこと(一般:1年以上、専門実践:3年以上)
- 離職後1年以内に受講を開始すること(延長申請で最大4年以内)
- ハローワークでキャリアコンサルティングを受けて受講前に申請すること
専門実践教育訓練では受講期間中も6ヶ月ごとに給付が受けられるため、長期の養成課程でも経済的負担を大幅に軽減できます。また、訓練修了後1年以内に就職すると追加で20%が支給されます。
⑥ 確定申告:年の途中退職で税金が戻ってくる
年の途中で退職した場合、払いすぎた所得税が還付されることがあります。会社員は年末調整で税金を精算しますが、年の途中で退職すると年末調整ができません。翌年3月15日までに確定申告をすることで、所得税の過払い分が戻ってきます。
| 還付の種類 | 内容 | 対象者 |
|---|---|---|
| 所得税の還付 | 源泉徴収された税額が過払いになっている場合に差額が返還 | 年の途中退職者 |
| 医療費控除 | 年間10万円以上の医療費を支払った場合に所得控除が受けられる | 医療費が多い方 |
| ふるさと納税 | ワンストップ特例を選択していた場合も、退職年は確定申告への切り替えが必要なケースあり | ふるさと納税実施者 |
| 生命保険料控除 | 年末調整を受けられなかった場合に確定申告で控除可能 | 生命保険加入者 |
住民税は前年の収入に対して課税されるため、退職して収入がなくなっても翌年まで支払い義務があります。退職後は「普通徴収」に切り替わり、年4回まとめて自分で納付します。退職直後に高額の住民税納付書が届いても慌てないよう、事前に準備しておきましょう。
無職期間がある年の途中退職の場合、数万円〜十数万円の還付が発生することがあります。申告は翌年1月1日から受け付けており、早めに行うと早く還付されます。マイナポータルを使えばオンラインでも申告可能です。
退職理由で変わる:自己都合 vs 会社都合・特定理由
失業給付の給付日数や待機期間は、退職理由によって大きく異なります。「特定理由離職者」や「特定受給資格者」に該当すると、自己都合より有利な条件で受給できます。
- 給付制限あり(最長3ヶ月)
- 給付日数:90〜150日
- 加入期間:2年間で12ヶ月以上
- 自分の意思で辞めた場合
- 給付制限なし(待期7日後すぐ受給)
- 給付日数:90〜330日
- 加入期間:1年間で6ヶ月以上でOK
- ハラスメント・健康上の理由なども対象
体力・精神的健康上の理由での退職、医師の指示による退職、職場でのハラスメントを理由とした退職などは「特定理由離職者」に該当する可能性があります。離職票の退職理由欄に正確に記載し、必要に応じてハローワークに相談しましょう。
退職後にやること:手続きチェックリスト
退職後はやることが多く、給付金の申請を忘れてしまいがちです。以下のチェックリストを活用して、漏れなく手続きを進めましょう。
よくある質問(Q&A)
Q. 転職先がすぐ決まった場合でも失業給付はもらえますか?
Q. 傷病手当金と失業給付、どちらを先にもらえばいいですか?
Q. 看護師はすぐ再就職できるから失業給付は関係ない?
看護師は確かに求人が多いですが、焦って転職先を決めると後悔につながりやすいです。失業給付を受けながら職場をじっくり選ぶ期間を確保することも、長期的なキャリアにとって重要です。
まとめ
- 退職金は勤続年数・施設によって大きく異なる。「退職所得の受給に関する申告書」の提出を忘れずに
- 傷病手当金は病気・ケガで働けない場合に最長1年6ヶ月、給与の2/3が支給される
- 失業給付は自己都合・会社都合で給付日数や待機期間が異なる。2025年改正で自己都合の待機が大幅短縮された
- 再就職手当は早期就職すればするほどお得。失業給付をもらい切るより有利なことが多い
- 教育訓練給付金はスキルアップ・資格取得の費用を最大70%補助してもらえる制度
- 確定申告で、年の途中退職なら払いすぎた所得税が戻ってくる可能性がある
- これらはすべて自分で申請して初めてもらえる。手続きを忘れずに行おう
退職は不安なことも多いですが、使える制度をしっかり把握しておくだけで、経済的な不安を大幅に減らすことができます。「知らなかった」で損をしないよう、このチェックリストを活用して、退職後の手続きを一つひとつ進めていきましょう。

