「退職届の理由欄、なんて書けばいいんだろう…」と頭を抱えていませんか。
私も3年目で初めて転職を考えたとき、退職届の「退職の理由」欄を前に30分以上固まってしまいました。正直な理由を書くわけにもいかないし、かといって嘘もつきたくない。そんなとき先輩から教えてもらったのが「一身上の都合」でした。
でも実際に使ってみると、書き方だけでは足りないことに気づきます。上司に「一身上の都合ってどういうこと?」と聞かれたとき、どう返せばいいのか。なかなかリアルな情報は出てきませんよね。
この記事では、「一身上の都合」を選ぶ心理的な背景から、退職届の文例・面談での伝え方・上司に深掘りされたときのパターン別返し方まで、現役看護師の目線で丁寧に解説します。転職先の面接でどう説明するかまで含めて整理しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。
「一身上の都合」とは?看護師がこの表現を選ぶ心理と使える場面

なぜ看護師は「一身上の都合」を選ぶのか
「一身上の都合」は法律的にも認められた退職理由で、退職届の表現としては最もオーソドックスな選択肢です。しかし、この言葉が広く使われる背景には、単なる慣習以上の心理的な理由があります。
看護師の退職理由を正直に書くと、「上司との関係が耐えられなかった」「夜勤で心身ともに限界だった」など、感情的な表現になりがちです。こうした理由を退職届に書いてしまうと、退職前の職場関係が悪化したり、退職後も業界内で噂が広まったりするリスクがあります。
看護師業界は特に横のつながりが強く、転職先と前職が同じ地域の場合、引き継ぎや採用段階で情報が共有されることがあります。「一身上の都合」という表現は、本音を守りながら円満に退職するための、いわばプロとしての自己防衛手段でもあるのです。
私の同僚も「正直に書いたことで退職前の空気が最悪になった」と後悔していました。「一身上の都合」でまとめることは「逃げ」ではなく、自分のキャリアを守る賢い選択です。
使っていい場面・使いづらい場面を整理する
家庭・育児の事情
親の介護、育児優先、配偶者の転勤など。「一身上の都合」が最も自然に使えるケース
体調・健康上の理由
持病の悪化、精神的疲弊、腰痛など。詳細を話したくない場合に特に有効
キャリアチェンジ・転職
他の病院・施設への転職、専門性を磨きたいなど。前向きな理由でも使えます
理由をぼかしたい場合
人間関係・職場環境への不満など、伝えにくい本音を包む言葉として機能する
一点注意してほしいのは、「一身上の都合」はあくまでも退職届に書く表現であって、上司との面談でこれだけを繰り返すのは難しいという現実があります。退職届の記載と口頭での面談は別物として準備しておく必要があります。その詳細は後の章で解説します。
「一身上の都合」以外の退職理由(体調不良・家庭の事情・転職など)の具体的な例文については「看護師の退職理由の例文と好印象に伝えるコツ」もあわせて参考にしてください。理由別の言い換えパターンを網羅しています。
退職届に書く「一身上の都合」の正しい文例と書き方

退職届の定番文例(縦書き・横書き対応)
退職届に書く文章は、基本的にシンプルで構いません。長々と書いても読まれる文書ではないですし、余計な情報を書けばそれだけ突っ込まれる余地が増えます。以下の文例をそのまま使っていただいて問題ありません。
退職届
私事、一身上の都合により、令和○年○月○日をもちまして退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
令和○年○月○日
(所属部署)
(氏名) 印
○○病院
院長 ○○○○ 殿
縦書きが慣例の職場もありますが、横書きでも問題ありません。大切なのは手書きで丁寧に書くこと、捺印を忘れないこと、そして提出先(宛名)を間違えないことです。病院によっては「看護部長宛」のこともあるので、先輩や総務に確認しておきましょう。
退職届を突然提出するのはマナー違反です。まず直属の上司に退職の意向を口頭で伝え、その後退職届を提出するのが正しい順序です。書類を先に出してしまうと、人間関係がこじれる原因になります。
退職届を出す前の確認リスト
「一身上の都合」は退職願・退職届のどちらにも使えますが、提出するものが違うと対応も変わります。詳しくは「看護師の退職までの流れと手続き完全ガイド」も参考にしてください。
退職面談での「一身上の都合」の伝え方と実際の会話例

退職届に「一身上の都合」と書くのは簡単ですが、面談の場でそれだけを言い続けるのは実際にはかなり難しいです。私の周りでも、面談で予想外に深掘りされて、つい本音を話してしまって気まずくなった…という人が何人かいました。
面談では、「一身上の都合」を起点にしながらも、少しだけ具体的な言葉を添えるのが現実的です。ただし、具体的すぎると「じゃあそれはこういう形で解決できるけど」と引き止められる材料になります。以下の状況別の会話例を参考にしてください。
家庭の事情を理由にするケース
看護師:「お忙しいところお時間をいただきありがとうございます。このたび、家庭の事情により退職させていただきたいと思っております。」
上司:「家庭の事情って、どういうこと?」
看護師:「家族の状況が変わりまして、今の勤務形態を続けるのが難しくなってしまいました。詳しいことはなかなかお伝えしにくいのですが、ご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません。」
「詳しいことはお伝えしにくい」という一言が非常に重要です。この言葉は相手に「これ以上聞くのは失礼かもしれない」と思わせる効果があります。感謝と謝罪の言葉をセットで添えることも忘れないでください。
キャリアチェンジが理由のケース
看護師:「自分のキャリアについて考え直す機会があり、今後の方向性を変えたいという気持ちが強くなっております。お世話になった職場を離れることは心苦しいのですが、一身上の都合により退職させてください。」
上司:「どこに転職するの?」
看護師:「まだ具体的なことはお伝えできる段階ではないのですが、これまでの経験を活かせる分野で考えております。」
人間関係・体調不良をぼかすケース
本当の理由が人間関係の問題や体調不良の場合、それを直接告げると「解決策を提案する」「配置転換を勧める」という方向に話が進んでしまいがちです。こうしたケースでは、より曖昧な言い方が有効です。
看護師:「しばらく自分の将来について真剣に考える時間を取りたいと思いまして、今の職場を一度離れようと決意いたしました。職場への不満ではなく、私自身の問題です。」
上司:「何かあったの?」
看護師:「個人的なことで、うまくお伝えできないのですが、今は自分自身と向き合う時間が必要だと感じています。温かい職場に感謝しているからこそ、きちんとお伝えしたくて…。」
「職場への不満ではなく、私自身の問題です」という一言は、上司に「追及しても意味がない」と思わせる効果的なフレーズです。
上司に深掘りされたときの返し方【パターン別完全対策】

「一身上の都合」を伝えても、上司から「もう少し詳しく教えてほしい」と言われることは珍しくありません。特に長く一緒に働いた上司ほど、本当のことを知りたいと思うのは自然なことです。でも、だからといって本音を全部話す必要はありません。
私の同期が辞めたとき、上司に「正直に教えてほしい」と言われて人間関係の不満を話してしまいました。そのあと「その相手と話し合いの場を設けようか」という展開になり、余計に複雑になったと言っていました。深掘りに備えたセリフをあらかじめ決めておくことが、退職面談の鉄則です。
「もう少し詳しく聞かせてほしい」と言われたとき
最初の深掘りはほぼ全員が経験するパターンです。ここで焦って本音を話してしまうかどうかが分かれ目になります。
「個人的な事情が重なっておりまして、詳しいことはお伝えするのが難しい状況です。ご心配いただいてありがとうございます。ただ、この決断は時間をかけて出したもので、変わることはありません。」
ポイントは「詳しく話せない理由があることを匂わせる」「でも決意は揺るがない」を同時に伝えることです。上司が誠実に向き合ってきているからこそ、「感謝しているが話せない」という姿勢を崩さないことが大切です。
「部署異動・給与アップ」などの引き止めを提案されたとき
引き止めは好意から出ることが多いため、つい「それなら…」と気持ちが揺れてしまうことがあります。しかし一度「条件が変われば残る」という姿勢を見せると、交渉が長引くだけです。
「お気持ちはとてもありがたいのですが、今回の決断は職場の条件というより、私自身の事情によるものです。条件が変わっても、私の状況が変わるわけではありませんので、退職の意思は変わりません。」
「条件の問題ではなく、私自身の問題」という言い方が非常に有効です。引き止め提案を「ありがたい申し出」として受け取りつつも、それが解決策にならないことを穏やかに伝えられます。
「誰かに何かされたの?不満があったの?」と詮索されたとき
特定の人物への不満や職場環境への怒りを引き出そうとするパターンです。「本当のことを教えてほしい」という言い方で来ることもあります。
「職場の方々には本当によくしていただいて、感謝しかありません。人間関係に問題があったわけではなく、あくまで私個人の事情です。こちらに非があるわけではないことは、はっきりお伝えしたいと思っています。」
「職場への不満ではない」と明確に言い切ることで、詮索の矛先をかわすことができます。特定の人物の名前を出すのは絶対に避けてください。退職後も業界内で関係者と顔を合わせる可能性があります。
「あなたに辞められると困る、もう少し待ってほしい」と情に訴えてきたとき
感情的な訴えには感情で返さず、誠実さを保ちながら「申し訳ないが決意している」姿勢を一貫して示すことが重要です。
「ご迷惑をおかけすることは本当に心苦しいです。引き継ぎについては最大限協力させていただきます。ただ、私の事情として、どうしても今のタイミングで退職させていただく必要があります。どうかご理解いただけないでしょうか。」
「引き継ぎに協力する」という姿勢を見せることで、「無責任に辞めようとしている」という印象を与えずに済みます。情に訴えられると弱い人は特に、「感情的になったほうが負け」と自分に言い聞かせてください。涙を見せたり謝り続けたりすると、余計に引き止めが長引きます。
看護業界は特に人間関係が狭く、転職先が同じ地域の場合は情報が伝わることがあります。退職面談で前の職場への不満や悪口を言ってしまうと、それが転職先の採用担当者に届くケースも実際にあります。「一身上の都合」でまとめることは、自分のキャリアを長期的に守る賢い選択です。
転職先の面接で退職理由を聞かれたときの答え方

「一身上の都合」は転職先の面接には使えません。面接では具体的で前向きな理由が求められます。ただし、嘘をつく必要はなく、本当の理由を「角が立たない言い方」に変換すればいいだけです。
NG例とOK例の比較
| 退職理由 | NG例(避けたい言い方) | OK例(面接で使える言い方) |
|---|---|---|
| 人間関係の問題 | 「上司と合わなくて…」 | 「チームの連携を大切にできる環境で働きたいと思いました」 |
| 夜勤・体力的限界 | 「夜勤がきつすぎて続けられなかった」 | 「長く安定して働き続けるために、働き方を見直したいと考えました」 |
| 給与への不満 | 「給料が低かったから」 | 「スキルアップとともに待遇も向上する環境で成長したいと思いました」 |
| 職場環境への不満 | 「ブラックな職場で限界でした」 | 「より専門性を高められる環境で再スタートを切りたいと考えました」 |
退職理由→転職動機の言い換えテンプレート
「〜が嫌だったから辞めた」ではなく、「〜がしたいから転職した」という形に変換することが大切です。以下のテンプレートをそのまま使えます。
【人間関係が理由の場合】
「前職では、チームの連携について思うところがあり、改めてコミュニケーションが活発な職場環境で働きたいと考えるようになりました。貴院の多職種連携の取り組みに共感し、応募させていただきました。」
【夜勤・体力的な理由の場合】
「前職では急性期病棟での夜勤が続き、体調を整えながら長く働き続けるために、今後の働き方を見直したいと思いました。貴施設の日勤中心の体制に魅力を感じています。」
【キャリアアップが理由の場合】
「急性期の経験を積んだ上で、今後は在宅看護の分野でも力を発揮したいと思い、転職を決めました。前職には感謝していますが、自分の目指す方向性とのズレを感じるようになりました。」
転職先の面接での退職理由は「前向きな動機+応募先への志望動機」がセットになっていると、説得力が増します。
「一身上の都合」で退職すると失業保険はどうなる?
「一身上の都合」で退職すると、雇用保険上は自己都合退職として扱われます。これが経済的に結構インパクトのある話で、私もこれを知ったときはちょっと焦りました。
自己都合退職の場合、ハローワークへの申請後、給付が始まるまでに「待機期間(7日)+給付制限期間(2〜3ヶ月)」が発生します。一方、会社都合退職なら待機期間の7日後から給付が始まります。転職先が決まっていない状態で辞める場合、この差は生活費に直結します。
| 退職区分 | 給付開始まで | 所定給付日数(勤続10年未満) |
|---|---|---|
| 自己都合退職 | 申請後 約2〜3ヶ月 | 90日 |
| 会社都合退職 | 申請後 7日 | 90〜120日 |
| 特定理由離職者※ | 申請後 7日 | 会社都合と同等の場合あり |
※特定理由離職者とは、体調不良・親の介護・配偶者の転勤などの正当な理由で辞めた場合が該当します。「一身上の都合」の実態がこれらに当たる場合は、ハローワークで正式に申告することで給付制限が免除されるケースがあります。
失業保険以外にも、看護師が退職後に受け取れる給付金は複数あります。詳しくは「看護師が退職後にもらえるお金の全まとめ」をご参照ください。申請を忘れると損をする制度も含まれています。
よくある質問
Q. 「一身上の都合」と書くだけで本当に退職できますか?
はい、法律上は退職理由を詳細に説明する義務はなく、「一身上の都合」の記載で退職届として有効です。ただし、就業規則で定められた申告期限(多くは1〜3ヶ月前)を守る必要があります。期限内に退職届を提出すれば、原則として退職は認められます。
Q. 人間関係が理由なのに「一身上の都合」にしても大丈夫ですか?
問題ありません。人間関係の悩みは非常にプライベートな事情であり、「一身上の都合」に該当します。職場環境への不満を正直に書いてしまうと、退職後のトラブルや不要な詮索につながる可能性があるため、むしろ「一身上の都合」とまとめるのが賢明です。
Q. 看護師が退職届を出して「受け取れない」と言われたらどうすればいい?
雇用主には退職届を拒否する権限はありません(民法627条により、2週間前の通知で退職は可能)。受け取りを拒否された場合は、内容証明郵便で送付する方法が有効です。それでも解決しない場合は、労働基準監督署やユニオンに相談してください。
Q. 上司に深掘りされても「一身上の都合」を通せますか?
通せます。上司がどれだけ聞いてきても、「個人的な事情で詳しくはお伝えできません」と繰り返す権利が従業員にはあります。感情的にならず、毅然とした態度で「決意は変わらない」ことを伝え続けることが重要です。上司との面談は1回とは限りません。2〜3回同じことを繰り返されても、一貫して同じ答えを返すことが最終的には有効です。
Q. 退職届に「一身上の都合」以外を書いてはいけませんか?
書いても問題ありませんが、リスクがあります。「人間関係が理由」などと具体的に書くと、職場での関係が退職前にこじれる可能性があります。失業保険の給付を有利にするために「会社の都合」と書きたい場合は、その根拠(ハラスメントなど)を別途記録しておく必要があります。基本的には「一身上の都合」にとどめるのが無難です。
まとめ
- 「一身上の都合」は看護師がキャリアを守るための正式な表現。本音が伝わらないことがプロとしての自衛になる
- 退職届の文例は「私事、一身上の都合により〜退職いたしたく…」が定番。手書き・捺印・宛名に注意
- 面談では「一身上の都合」を起点に、少しだけ具体的な言葉を添えて感謝と謝罪をセットで伝える
- 上司の深掘りには4パターンがある:詳しく聞く・引き止め提案・詮索・情に訴える。それぞれに対応フレーズを用意しておく
- 「職場への不満ではなく、私自身の問題です」「詳しいことはお伝えしにくい」の2フレーズが面談の切り返しに最も有効
- 転職先の面接では「一身上の都合」は使えない。前向きな動機+応募先への志望動機に言い換える
- 自己都合退職は失業保険の給付まで2〜3ヶ月かかる。体調・介護・配偶者転勤は「特定理由」に当たる場合あり
「一身上の都合」という言葉を正しく使いこなすことは、退職を円満に進めるための重要なスキルです。特に上司からの深掘りに備えたセリフを事前に準備しておくことで、面談の場で焦ることなく、自分の意思をしっかり伝えられるようになります。

